大会長挨拶

ご挨拶

大会長 北村 立 プロフィール写真

第40回日本老年精神医学会
大会長 北村 立

このたび第40回日本老年精神医学会の大会長を拝命しました,石川県立こころの病院の北村です.会期は2025年9月26,27日,会場は金沢市文化ホールと金沢ニューグランドホテルです.また池田学理事長が大会長を務められるIPA InternationalCongressが9月24~27日に同会場で開催されますので,本大会はIPAとの合同開催となります.

ご存知のとおり,「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」(認知症基本法)が2023年に全会一致で可決され,2024年1月1日に施行されました.第一条(目的)では,共生社会を「認知症の人を含めた国民一人一人がその個性と能力を十分に発揮し,相互に人格と個性を尊重しつつ支え合いながら共生する活力ある社会」と定義付けています.これを受けて,今大会のテーマを「認知症になっても希望の持てる共生社会の実現」としました. 認知症基本法と歩調を合わせるかのように,2023年にレカネマブ,2024年にドナネマブと2つの抗アミロイドβ抗体薬が発売され,アルツハイマー病治療の選択肢が広がりました.さらにブレクスピプラゾールがアルツハイマー型認知症に伴う焦燥感,易刺激性,興奮に起因する,過活動又は攻撃的言動に対し適応が拡大され,わが国で初めてBPSDに対して保険適応のある薬剤が誕生しました.認知症の治療環境が大きく変わりつつある中で,今大会が開催されることは意義深いことであり,活発な議論が期待されます. 認知症診療には2つの空白期間があると言われています.1つ目は違和感に気づいてから診断されるまでの期間,2つ目は診断されてから介護保険サービスを利用するまでの期間です.抗アミロイドβ抗体薬の登場により,1つ目の期間は短縮し,2つ目の期間は延長すると見込まれます.2つ目の期間に何をすべきか,つまり診断後支援が今以上に重要になると考えています.薬物療法だけでなく,精神療法や家族教育,作業療法などの非薬物療法による生活支援,そこに精神科医療の大きな役割があると思います.特に作業療法士による生活機能の評価や訪問指導は介護との連携にもつながるので大切です.今大会では作業療法に関するセミナーを実施し,将来的には学会認定の作業療法士の養成も考えています.

金沢での開催は4回目になります.2024年正月の能登半島地震により残念ながら能登半島の復興はいまだ遠い状況ですが,金沢市はその影響もなく,多くの観光客が訪れ活気にあふれています.金沢市は歴史と文化が息づく美しい城下町です.日本三名園の一つ「兼六園」や「金沢城公園」では四季折々の風景を楽しめます.また,伝統的な町並みが残る「ひがし茶屋街」や「長町武家屋敷跡」では,江戸時代の風情に触れられます.現代アートが楽しめる「金沢21世紀美術館」も人気があります.近江町市場では新鮮な海の幸や加賀野菜を味わえ,地元グルメも堪能できます.会場は尾山神社の向かいにあり,近江町市場も近く,金沢市中心部の観光地の散策にとても良い立地にあります.9月は秋の訪れを感じる気候で,観光にも最適な時期ですので,たくさんの皆様方のご参加をお待ちしております.